junkoの日記

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日豪、映像作品競演。

近頃すっかり制作モードで作品作りに没頭中な毎日ですが、たまには不特定多数の人にもお目にかかりたいし、ちょっと違う空気も吸いたいものだと思っていたところ、展覧会のオープニングのお誘いがあり覗いてきました。
東京都写真美術館学芸員笠原美智子さんからのお誘いで、東京オペラシティアートギャラリーで始まった展覧会「トレース・エレメンツ」のオープニング・パーティであります。


”日豪の写真メディアにおける精神と記憶”というサブ・タイトルがついているとおり、日本とオーストラリアの映像系作家の展覧会。日本作家(古橋悌二・古屋誠一・松井知恵・志賀理江子・田口和奈)は、いずれも作品は既知の方々でしたが、オーストラリア作家の作品は私はまだ未見のものばかり。日本とオーストラリアという地域に限定されていますが、作品の質は興味深く洗練されたつくりのものも多くて見ごたえがあります。
特にヴィデオ映像作品は見るのに時間かかるのですが、この日はパーティというちょっと雑然とした状況ながら、かなりジックリと見入ってしまいました。それでもさらに、後日あらためて通常の展示空間の中で落ち着いて見たいものだ、と思ってしまうラインナップです。


まず、全体的に沈静的な作品が多い中、フィリップ・ブロフィのビデオ作品はハイテンションでシニカルな作風が気になりました。皆さんお馴染みのミュージシャン(エルトン・ジョンビリー・ジョエルフィル・コリンズマライア・キャリーなどなど)のミュージック・クリップのオーディオ・トラック部分を違う音響に仕立て上げて見せるという作品。もともと手の込んだ仕上げのヴィデオ・クリップを好き放題?いじっているのも、どこか爽快感さえ感じさせます。ブロフィ氏の音のセンスの良さにも興味ありでした。
他にもハイテンション&シニカルな作風を感じたのは、志賀理江子さんの写真作品。今年の”33回木村伊兵衛賞”受賞作家でもあります。日本人離れした感覚に、こちらの作品群も興味シンシンです。ヴィデオ作家の作品とは違う写真特有の静けさが、彼女の写真ビジョアルにインパクトがある分、かえって独特な雰囲気を醸し出しています。(彼女とは、10月開催の写真美術館の展示で御一緒する予定です。)
古屋誠一氏は、近年また活発に発表されているようですが、奥さんのクリスティーネさんの肖像写真は、古屋作品の永遠のアイコンですね。古屋氏御本人には、初めてお目にかかりましたが、作風から想像していた方とはちょっと意外なキャラの方でした。(笑)


他に気になったのは、ダムタイプ古橋悌二氏の作品。は、以前もどこかの美術館での展示を見て、静かな感動を覚えた作品でした。今回はまた新たなインスタレーションで再現されています。
古橋氏はすでに亡くなっているのに、作品がこのようにバージョンを変えながら展示され続けている事にも、何か感慨を感じてしまいます。そして、作品が独り歩きをして、人々によって伝え続けられているという事は、どれほど観る側にメッセージを送り続けている作品なのだろうかと思わせます。何処かでフトまた違うかたちで見せてもらいたい作品です。


その他にも、色々思うところのある作品ばかりでしたが、いちいち全部挙げるのもちょいと無粋ですから、今回の感想雑記はこの辺で終了という事にいたします。