junkoの日記

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日常を取り戻すものとしての、様々なかたち。

 

総務省からの委託を受けた施設に、平和祈念展示資料館があります。(東京都新宿区)

こちらは第二次世界大戦に関しての、戦中から戦後にかけての民間資料を保存する施設です。

 

www.heiwakinen.go.jp

 

以前観覧した際、気になる展示品を見かけ、撮影させて頂くのは可能かどうか資料館に打診、企画提出し総務省へ申請、先日許可が下りました。

資料館としても色々発信してもらう事で、収蔵品を世にアピールできる故に、撮影企画の快諾を得ました。

資料館に展示してある品や収蔵してある倉庫でも、色々撮影させて頂く事ができました。

 

 

その興味を持ったものというのは、抑留者の人々が収監中に制作したという、数多くの手製のスプーンやフォーク、箸などの道具です。

多様なかたちや意匠が施された品は、抑留中の日々において、”ものを造る”という行為が当事者にとって、いかに切実であったかを具現化したように見えたのです。

 

 

 

抑留者が使用していた手製のスプーンなどは、当時日々身に着けていた私物としては、最も大事なものであっただろうと思われます。
軍(ソ連軍など)から支給されたスプーンや、作業で使用したアルミの端材を溶かし自ら成形したもの、現地に自生していた白樺やバラの木などの木材類、それらを原型として個々にアレンジし自分のためのものとしている。
その品々には、ささやかながらも個人的な思い入れが見られ、それぞれに持ち主の気配を感じる。帰国するための思いを込めて、成形されたかたちや言葉が刻まれているのです。

 

何よりも食事をするという行為に結び付く道具であるゆえに、生き続けるためのエネルギーが直に見受けられる。
日々使用する大事なものだからこそ、単なる道具を越えたそれらへの愛着と共に、人間の生命力の現れとも見える印象深い品々であり、非常時の中にあって現れてくる人間性とは、という事を考えさせられます。

 

 

 

 

 

 

収蔵品の中には、とても丁寧にかたちを成形しているものもあり、まるで茶道具のような品格さえ感じます。

 

 



 

 

 

それにしても、新宿副都心の高層ビル(新宿住友ビル)の中にこの資料館はありますが、シリアスな物事を扱っている空間から、一歩外側に出るとリニューアルしたばかりのモダンな高層ビルへ_とその移動の対比が、過去から現在へワープしたような妙な感覚になります。