junkoの日記

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ちょっと裏から見てきました。

さて先日は、東京湾岸を漂ってきました。近場ですが普段は滅多に行けない場所です。海の上ですから。


ちょっと前、先月の事になります。まだ冬真っ只中という時期でしたが、この日はクルージングにはうってつけの良く晴れた天候が幸い。東京と千葉の県境にある旧江戸川からクルーズ船で出発し、穏やかな航行で東京湾岸を目指します。
こちらはお誘いを受けての参加で、首謀者はBOAT PEOPLE Assocoation(BPA)のメンバー。彼らとは、去年もBPA企画のクルーズに誘われて同乗。このブログにも感想をアップしました。→「京浜運河工場クルーズ
しかし、今回は全くのプライヴェート企画。実は彼らが所有していたバージ船を手放す事となったので、最後の船の点検をしに停泊地、木場へと向かう事となったのでした。このバージ船は、2005年の横浜トリエンナーレにBPAが参加した時、使用していたものです。(当時、横トリのメイン会場があった山下埠頭入り口に停泊していた船がコレになります。)


距離にしたら10キロも無いような道程、郊外から都心へと船を進めて行くごとに移り行く光景は、陸地にいる時とはまた違った体感を感じます。陸からちょっと距離をおいている故か、街並みの変貌のイメージがつかみ易い。(例えば飛行機に乗った時、離陸して上空へ上がりきらないほんの少しの間、機内の窓から街並みの雰囲気がまだ感じられる数百メートル上から眺める距離感―に近い感覚。)
東京湾岸ならば、割と馴染みがあるように感じますが、海上からという通常では行かれないルートを辿る事で、見えなかった部分が見えてくるような気がします。おまけに、BPAメンバーは建築関係者も数名おり、クルーズしながら目に入ってくるいろんな建造物についての情報は、私のような素人にはなかなか面白い話でした。


まず、浦安にあるマリーナからクルーズ船で出発。旧江戸川を下り東京湾へと向かう。河口には、周りの穏やかな郊外風景とは全く異質な、ハリボテ感のあるディズニーランド。それを横目に見ながら東京湾へと入ります。谷口吉生設計の展望施設もある葛西臨海公園の陸地沿いを通り過ぎ、荒川河口を越えると一気に高層ビルが現れる。こうして、都心エリアへ入ったのがわかる光景となっていきます。
そうしているうちにバージ船が停泊している木場に到着する。以前は貯木場として使われていたそうです。

此処には、随分以前から使用されてもうすぐ破棄寸前か、といった風体の船が沢山停泊しています。打ち捨てられた機材やジャンク物も多く、雰囲気としてはまるでサスペンスもののドラマの中で、怪しげな取引が行われるには打ってつけ、といった感じで登場しそうな場所。けれど、この日は晴天ほぼ無風状態、海も穏やかでなんとものどかな光景。陸からは行けないエリアなので、関係者以外の出入りも無さそうな場所。とても静かだ。その向こうには、つい数年前から林立盛んな湾岸の高層マンションが見えています。数百メートル先では、見慣れた街並みに人や車が蠢いているだろうに、此処はといえば人気がまるでありません。都心のエアポケットのような場所です。


バージ船でひと休みしてから、今度は近くにある豊洲や月島の運河を巡ります。湾岸あたりは地図で見ても分かりますが、随分と多くの運河が存在しています。江戸時代から内陸への運輸に利用してきた訳なのだから、結構な歴史的遺物ですね。
今回の運河探訪は私は始めてでしたが、このルートこそ滅多にお目にかかれない東京の一面が見れるような気がしました。普段私たちが目にする街なかの道路沿いは、利便性のために次々に新しく街並みが変わっていきます。しかし、運河沿いには、以前水運が盛んだった頃の名残りもまだ残っていたりします。そんな表向きの街並みとは全く違う景色に、東京の普段見慣れない「背中」を見てしまったようで、なかなか味わい深い体験でした。


ここは日本?と思われるようなスポットもあったり。アジアを感じます。


さて、迷路のような運河を抜けてお台場へ。一気に現在進行中の東京へと連れ戻されます。
先日ニュースでも公表された、新しい東京湾横断橋の巨大な橋脚がお台場の突端で作られています。(残念ながら写真はありませんが。)このようなものがいつの間に出来上がりつつあったとは。やはりここまで大きい構造物を見せつけられると、ただただ圧倒されてしまう事になり、もはや私たちの手に負えないものの力を感じます。いつの間にか広がっていき、はみ出していくような大きな力。”圧倒=感心”と感じてしまうような、ちょっと複雑な心境を呼び起こす光景でもあります。


今回のような身近にある場所を裏返して違う側面から眺めたような探訪、面白い経験でした。
同乗したBPAメンバー山崎氏によるレポートは、こちらになります。