junkoの日記

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中国アート、政治の季節。

北京滞在中に訪れたのは、観光地ばかりではない。北京市の郊外には、何箇所か芸術区といわれるエリアがあるが、現在北京(中国国内でも?)で最も大きな宋庄芸術区(北京市通州区)へ行ってみた。映里さんからも、滞在中に見ておいたほうが今の北京が見れていいかも、と言われたので訪れる事に。
芸術区とは、アーティストやその関係者のスタジオや居住するエリアが集まってできた地区。草場地も芸術区のひとつだが、今では有名なギャラリーが集まり、空港からも近いため地価が随分上がっているらしい。なので新たに人が集まるには、すでに敷居が高くなっているようです。


宋庄芸術区は、北京市の東側にあり、草場地と比べるとその広さは何十倍ではないかと思われる。周辺はまだ開発途上というような場所で、市街地からも結構離れた印象である。間近には電車なども通っていないため、私も草場地からタクシーで30分くらいかけて向かった。
ここも始めはアーティストが集まり、そのうちギャラリーや美術館もできている。次第に彼等をお客とする画材や素材関係の店舗、スーパーや商店、食堂、レストランなどなど、どんどん人が集まり街も大きく広がっているようです。観光客のためのワークショップ・ツアーも目にした。現在は5000人以上のアーティストが住むと言われている。


先日の三影堂オープニングで宋庄の北京當代藝術館の館長ともお会いしたので覗きに行く。中国国内の中堅作家の展示が多いようです。


宋庄芸術区も大きくなるにつれて次第に街自体の評判も上がり、有名作家のスタジオ兼自宅が集まった高級住宅街やデザイナーズ・マンションみたいなものを建て整備されたエリアもある。私は、やはりオープニングで知り合い、現在そのエリアに居住している作家の自宅を訪ねた。スタジオも兼ねた空間で、日本の居住空間と比べると、なんとも羨ましい限りである。彼女は多摩美筑波大学に留学していた事もあり日本語が達者、この地域についての内情を話してくれた。
宋庄のあたりは、もともと高圧線が上を通っている郊外の荒地のような場所だったので、開発当初は地価が相当安かったらしい。この地域の首長が、芸術区にすれば街の付加価値を上げていく事になるだろうと、最初は随分安い値段でアーティスト達に土地を売っていった。なんと現在は彼女が支払った20倍にも地価が上がっているという。そして宋庄にはやたらと美術館が多い。その理由も、土地の価値を上げるために、開発理由を”美術館を建てる”という申請が多いからだという。もちろん建前なので、開発後は全部が美術館になっている訳ではない。
どうやらアーティストが住み着くと、その土地の価値を上げてくれるらしいと思われ、一般の人々はアート作品は理解できなくても、そのような現象が起こる事で芸術区を認知しているらしい。


アーティスト達は少し前であったら、当局にとって不穏な存在であったのだが、昨今の中国アートの国際的な注目で、アート作品が高額で流通される現象も当局はやはり無視できない。そこで、”ここにアーティストが集って、国際的に流通していく作品を量産し、外貨を稼いでくれればそれで良し”と、当局がほとんど国策のように、宋庄芸術区の開発を考えているらしいとも。
しかし、どれほど思惑がうまくいくのかどうか。何千人もアーティストが住んでいる所なので、おとなしく作品だけ作っている人だけではなく、やはりデモや反体制っぽいパフォーマンスもよくあるらしい。私のオープニングにさえ公安が来ていたくらいなので、体制側としたらアーティストはいつまでたっても気が抜けない存在なのだろう。
ついでに、アイ・ウェイウェイ逮捕・保釈の裏事情も聞く事ができた。彼の家系と共産党内部の派閥関係が影響している事。政治と密接する興味深い話でした。