junkoの日記

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立ち退き事情について?

北京で撮影した場所へは、去年8月の展覧会開催以来行っていないので、現在の様子は直接分からない。近く展覧会を開くにあたって、現在はどうなっているのか確認したいと思い、以前現地で知り合いになった中国人の知り合いに連絡してみる。
現場は、北京中心街から北東の位置にある。北京首都国際空港から7〜8kmくらい離れている。中心街から空港へ向かう高速道路が近くを通っているため、好条件の立地として一帯が再開発されている。そこの広大なエリアの中にある取り壊し真最中の村がロケ場所である。



取り壊し最中だったので、果たしてまだ存在しているのか気になっていた。
知人は、最初の撮影時に偶然にも現場で知り合いになった若いアーティスト。彼も取り壊しの状況が気になって、そこに住み着いてしまったのだ。私の撮影時に、住民の人々との仲介役にもなってくれたり、時々手伝ってくれた。


取り壊されている場所は、ライフラインが全て切断されている。なので電気や通信は通っていないため、通信連絡が取る場合は、彼がネットカフェなどを利用してどうにか繋がる事はできる。
(しかし、あのような見捨てられたような場所から、やり取りができるというのも不思議な感じがする。)




向こうからの返答では、現在もまだ村は無くなっていないようで、知人もまだそこに住んでいるとの事。
最初に私が訪ねた時は2010年10月。その時の住人の話では、翌年(つまり去年)の春までには撤去されるとの話だった。そして、立ち退き料金に不服な住人達がかなり残っていたので、「そんなにすぐ無くなってしまうのかなー?」という様子だった。
案の定まだ抵抗している人がいた訳だが、去年の段階でかなり撤去が進んでいる状況に見えた。完全に無くなるのも時間の問題なのか、どうなるのかまだまだ不明のよう。



以前、住民から立退き料金(補償金)について聞いたが、住人それぞれの抵抗の仕方?で違いがあったように思えた。最後まで残っている人達は、それなりに家や土地を多く所有している人だったように見えた。
元来、中国では土地は国家のものなので、住人は所有権が無く「期限付きの土地使用権」を国から買うのである。なので、土地を管理している役人とデベロッパーが開発の段取りを決めてしまうと、(理屈では)元々土地の所有権を持っている訳ではない住人達の意向は無視して、突然立ち退きが行われてしまう。。。という事が1990年代くらいから頻繁に中国国内の各所で問題になっているようで、現在もまだ起きている訳だ。


立退き料金は、最初はもちろん少なめな金額を提示してくる。条件が飲めない人達は抵抗するのだが、ライフラインを切断してきたり、夜中でも喧しく作業したりと、色々いやがらせのような事を(住人の話では)役人の雇った者が仕掛けてくるらしい。耐え切れない人達は、しかたなく提示された金額で撤去していく。
もちろんいやがらせだけではなく、再開発された場所に新しく建てられたマンションに家賃無しで入居できるという、晦渋策も用意してある。けれど、住民達は年寄りも多く、それまでの住居よりは狭い居住空間になるので、割りに合わないと思ってしまうようだ。
そこで、徹底的に自分達の権利を声高に主張し、したたかに交渉する事で多額の保証金を得られるのを噂で知っているであろう住民達が、最後まで抵抗しているらしい。
よって、長年そこに住んでいて所有物(動産)が多い人が、その大きな権利を手放す引き換え条件として、残っているというのも分かってくる。


とにかく、色々な思惑が入り乱れているので、私のような外国人の闖入者が詳細を把握するのは難しいけれど、この国の色々な面がこの地域をロケしただけで見えてきたのは、非常に興味深い体験である。


画像は、2010年撮影のヴィデオ映像スチール。