junkoの日記

アーティスト(写真・映像) www.junkotakahashi.com https://www.facebook.com/junko.takahashi.376/ https://www.instagram.com/juwakot/

杭州ロケで思った事。


中国の地方都市への渡航は、これで三度目。今回の杭州は、一般的にもかなりよく知られている場所。中国八大古都の一であり、国家歴史文化名城に指定されています。





街自体の歴史も古く、遡ること新石器時代の遺跡も出土しているぐらい、昔から人が集まる地域。市域を貫流する銭塘江は昔から物流の重要なルートで、杭州の発展のきっかけにもなる。隋・唐時代にはこの地域で整備された運河の南端の街として、貨物集散地になり経済的に栄えていきました。
南宋になると杭州はその全盛期を迎え、1138年には正式な遷都が行われ、杭州宋朝の政治・経済の中心地となる。国都になってからは人口が急増し、13世紀後半には120万人以上、当時としては大都市の街へ。その後の元時代、マルコ・ポーロが訪れた際にその繁栄振りを「当方見聞録」に記しています。
この街の最も有名なスポットである西湖は、2011年に世界遺産に登録。湖は、西、南、北の三方を山に囲まれ、いわゆる”絵になる風景”が広がる明勝として、古より人々を魅了してきました。





現在はその歴史的なカルチャーを背景に、中国の国家AAAAA級旅行景区に指定された風光明媚な観光地となり、多くの人が周知する街になっています。ここは、すでに豊富で様々なイメージが存在している場所です。







という事で、杭州は中国の地方都市の中でも、多くの人がイメージしやすいメジャーな街。しかし今回、私が撮影した所は市街地から10数km以上の距離があり、街の喧騒からも全く離れたようなエリアです。
市郊外に広がる新興開発地は、いわゆる杭州のイメージはほとんど感じられません。しかしここは中流以上の人々が暮らすのを目的に計画された地域ですので、彼らを惹き付けるためにこの場の特性をアピールするものが必要。なのでこの地は、開発された目新しいエリアというだけではなく、自然の豊かさも感じられる所である、という具合に程よく視界へ入ってくる丘陵地のそばに立地しています。
その地形は、ここ江南地方特有の風景。西湖を緩やかに囲む、なだらかな山の稜線と同じものでもあります。ここからさらに市街地から離れた場所にも、広大な開発地がありましたが、そこにも地元ではちょっと知られた小高い山が近くにあり、それを望めるようなエリアになっていました。








まず始めにロケのため訪れたのは、天都城(TIANDU CITY)という場所。先日も記しましたが、この街にはなぜかパリのエッフェル塔を模したものが建っています。そしてその足元には、まるでパリの中心街にあるかのような建物を、そのまま模して移してきたようなマンションが並んでいます。
街はエッファエル塔を中心にして建てられ、それが真ん中に見えるようシンメトリーにデザインされている。塔へ一直線に貫く中央広場には、これまたヴェルサイユ宮殿ばりのデコラティブな噴水が鎮座しています。
これら中国的なものとは全く違う意匠を、アレンジする事もなくそのままもってくるあたり、かなり大胆であっけにとられてしまいます。








ここ天都城は、10年前にまずこのエッフェル塔とパリのアパルトマン?を造り、徐々にこの周辺にマンションやテラスハウスの新築を続けてきました。要するに、新しい街のシンボルとして最初に目立つものを造り、この街の特異性をアピールした訳です。
この街の奇妙なヴィジョアルは、出来た当初やはりちょっと話題になり、海外にまで噂が広がったみたいです。しかし、その後は特に目新しいものが増えた訳でもないので、人々の関心は薄れつつあり、今はかえってその奇抜な物体が、役目も分からず放り出されたままになっているような状態に見えます。







数回ここへ通ったのですが、その間私のように物珍しげに散策する目的で訪れている人は、全くと言っていいほど見当りませんでした。もともと観光地ではないので、当たり前かもしれませんが。
すでに耳目を集めた時期は過ぎ去ったというのに、未だこの街のシンボルとして存在し続けている巨大な塔の有様は、なんとも不自然な存在感です。
この塔のすぐ近くでは、まだまだ新しい建物が建設中。けれど、塔の真下辺りは何も無い放置状態、かえってこの空間を持て余しているかのように見えてきます。



これが盛りの過ぎたテーマパークなどであれば、もっと寂びれた印象のみが強いでしょう。しかし、ここは人々の生活の場でもあり、まだまだ変貌し続けている街でもあるのです。
都城の住宅販売センターで、セールス担当の人に話を聞いたところ、近い将来は塔の真下には、商店やブランドショップを造る予定があるそうです。今はまだ人が集う活気が見られませんので、その計画もいつの事になるのやら。もしも実現されたその時には、この塔がまたこの地域のシンボルとして復活するのでしょうか?
なんだか色んな意味合いや時間軸が交錯している様で、ますます不思議な光景と思えてしまいます。






都城 HP
http://zzhz.zjol.com.cn/05zzhz/200802zt/skycity/index.shtml
WEBの中では、当初想定していた輝かしくも理想の街の姿が紹介されています。




夕暮れの埃菲尔铁塔と山並み。