junkoの日記

アーティスト(写真・映像) www.junkotakahashi.com https://www.facebook.com/junko.takahashi.376/ https://www.instagram.com/juwakot/

新しい場所を探るための。。



或る場所を目指して立ち入る場合、事前にその場についての情報を地理的・歴史的に多少取り込むんで臨むのは、誰しも大抵行う事でしょう。そうする事で、始めて訪れる場所であったとしても、何らかのイメージを抱いて訪ねる事ができます。これまで全く接点が無かった場所であったとしても、イメージが段々と自分の中に沁み込み、訪れる前から徐々に馴染んでいく訳です。



イメージが個人的な体験へどのように影響を及ぼすのか、という事が気になり、そのような感覚について考えながら、見つかったのがこの本です。
空間の経験 身体から都市へ」 イーフー・トゥアン

この本では、空間や場所について「経験」する事による様々な感覚を、心理学・文化人類学や哲学などの分野から著している。現象学的地理学・人間主義地理学(人間主義っていうのがよい。)と謂われるジャンル。情感的な感覚を丁寧に分析しているので、読んでいてしっくりくる事が多い。
例えば、「能動的な意味で経験するためには、人は思い切って未知のもののなかへ入っていき、捉えがたいもの、はっきりしないものに関して実験を試みなければならない。熟達者になるためには、人は新しいものがもたらす危機にあえて直面しなければならないのであるが、なぜ、そうしなければならないのであろうか。人は危機へ駆り立てられて情熱的になるが、情熱は知力のしるしなのである。」という文章。
この感覚は、自分が新しい場所に出かける心境として感じていた”大きな誘惑を感じ実行したい気持ちが上回ってしまう場合、大抵の心配事は吹き飛んでしまう、、”ということにも通じているような気がして、なるほどーと思ったりした。



”誰のものでもある”空間が、どうして個人的な体験として経験できてしまうのだろうか。人間であれば誰しも、個人の「心象風景」を通して外側を見る事になるのだろうか。
多くの人が、ふとしたきっかけで感じる事でもある、このような微妙な情感のようなものを、この本では色々と検証しています。








都市のイメージ」 ケヴィン・リンチ


それでは都市において、実際に生活や滞在活動によって体験していると、そこでどのようなイメージを持つ事になるのだろう。この本は、実際にその都市に住む住民からリサーチをとり、彼らが抱いていた街のディテールについての印象をまとめている。そして、彼らが無意識に感じていた、曖昧なイメージを具体化してカテゴリー化させていく。都市計画の専門家ではなく、一般の人々が抱いている都市のパブリック・イメージを表出したなかなかユニークな著作。
私も始めて訪れた街では、その街を把握するためのオリエンテーションとして、バスや地下鉄で徘徊したりする。そのため、本で紹介されたリサーチ結果は、街の特徴を探るヴューポイントを教えてくれるようで興味深い。




これら揚げた本は、いずれも原典の出版時期は4・50年くらい前なので、そのジャンルでは古典とも言えます。しかし、当時ものの見方を変えたという新鮮さは伝わってきます。古典や名著と言われる所以。
そして、曖昧なイマジネーションを抱きながら制作していく事が常である自分にとって、視界が急に開けたりして、制作の次のステップへ向かうヒントとなったりします。