junkoの日記

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ヂョン・ヨンドゥの提示するウソとマコト。


先日で終わってしまいましたが、水戸芸術館での展覧会 「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」 大変面白く観覧しました。 





これまでも所どころで彼の作品を見かけていましたが、今回まとめての展示であらためてバリエーションの多様さを体感する。
随所に見られる作品制作の造り込みのウラを見せてしまうところが、文字通りヌケ感あり。ウソとマコトが交錯しながら、結局うまくだまされる。けれど、だまされても痛快。


水戸で撮影された新作ヴィデオ作品「マジシャンの散歩」ラストは鳥肌ものでした。世界的に有名なイリュージョンアーティスト、イ・ウンギョルの鮮やかな狂言回しに翻弄されながら、小曽根真(本人出演にも意外性)のピアノがシーンを盛り上げていく。
そうして、浮遊していく視点は、錯綜した物語が昇華されるような、何とも言いがたい開放感が広がっていく。しかし、ラストのラストでまたネタバレを見せ、予定調和を崩す。何重もの入れ子のドラマ。



展覧会タイトルは魯迅の小説「故郷」からの引用_
”思うに、希望とは、もともとあるものだともいえぬし、ないものだともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には、道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。” 
小説では前近代の中国社会での差別をテーマとしている。希望とはあらたに人々が作り出すもの、というような文章である。
ヂョンがこのタイトルを選んだという事には、表面的な価値観を超えて希望を生み出すのには?というような意味合いもあるようにも思えてくる。
昨今、価値観の相違からあちらこちらで生じている争いごと。彼の作品に貫かれている、ウソとマコトというような二項対立から突き抜けること、そこにあらたな道が開けるのでは?などと彼の作品を見て、ふとそんな事を思ってしまうのでした。