junkoの日記

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「mother's」展 感想記

去年2005年のヴェネツィアビエンナーレ、日本代表作家として展示されました石内都さんの展覧会「mother's」(11/5まで)を見に東京都写真美術館へ行く。
ほとんど石内さんの回顧展に近い企画のようですが、ビエンナーレの展示の雰囲気になるべく近いかたちとしたのでしょうか、すっきりとした見やすい印象でした。(私は現地のは見ていませんけれど。)
今や『日本を代表する女性作家』という立場を堂々と名乗られる感がある展示内容です。
石内さんの作品を今まで見てきてあらためて強く感じるのは、長いキャリアで撮る対象は変わっても作品のテイストが変わらないのだな、というわりとストレートな印象である。
以前、石内さんにお話を伺う機会があった時に、「写真はこの点々なのよねー。」と印画紙に現れる粒子について語られていた。
初期の風景写真は、確かに粒子がはっきり写し込まれている。時を経て人物を撮影し始めても、やはり「Scars」で人々の傷だったり、「1906 to the skin」では大野一雄の皮膚の皺やシミだったりと、表面的な質感に興味があるように見える。
「mother's」は、作家の母親が身に付けていたもの、特に実際身体に直接触れるものを選んで撮影している。若い頃の母親の写真を撮影したもの以外は、彼女の顔は一切見る事は無いという徹底ぶり。ものの表面にフォーカスを合わせる手法に気を使っているようだ。石内さんは多摩美時代、デザイン科でそれも染織を専攻していた、というのに何か通じるものがあるのだろうか。
「mother's」は石内さんの集大成といった作品なので、今後は何をテーマとされるのでしょうね。

余談ながら、偶然にも展覧会を企画された学芸員笠原美智子さんにバッタリお会いする。立ち話程度でしたが、久々にお会いでき、カタログをいただく。ありがたや。。