junkoの日記

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ビル・ヴィオラ登場

久々に巨匠と言われるアーティストが来日・登場といった感で始まった森美術館ビル・ヴィオラ:はつゆめ」展。私もこの展覧会は大いに興味有りです。
私のヴィオラ体験は、展示インスタレーションとしては美術館でほんの数点しか見た事がない。アーカイブで映像だけはかなり見たが、やはり彼の場合はインスタレーションも込みで体験する作品なので、今回の展覧会は大変に楽しみにしていた。まずは展示を見る前に本人からのコメントなりを聞いておくのもいいだろうと、作家のトーク・ショーやシンポジウムを聞きに行く。
初日のトーク・ショーは本人のコメントのみならず、展覧会名にもなっている「はつゆめ」リメイク版上映やら、中沢新一との対談など盛り沢山の4時間。ヴィオラ本人は落ち着いた風貌で語り口調も中々神妙かつ整然としたものなので、今やビデオ作家というだけではなく現代アート作家の巨匠の域に入っている雰囲気が十分に漂ってくる。その語りの内容がデジタル的な技術論よりも、制作において考えている精神論のようなものばかり。彼の作品はタイトルも宗教的フレーズからとってきたりと意味深なので、作品のウラが読めるようで興味深かった。
ヴィオラの作品は、ビデオという新しい手法を使っているけれど、技術的な新しさのみをコンセプトとして扱っているだけではない。新しい技法により見えてくる映像が、今まで目の前にあった世界の新たな見え方を提示している。彼は「内なる目」という言葉をよく使う。イメージの変容(たとえばスローモーション)によって、表層的なものからもっと内面的なものを見出そうとしている。その体験を宗教的な意味合いと共通させているようだ。特に日本での滞在で”禅”に共感を得たらしい。多くの欧米人が禅に惹かれるのは、そのような見方の変化の発見というところなのだろう。こちら日本人としては、「またここにも禅マニアがいましたか。。」とちょっと面映い感じがしないではないが。確かに以前の作品は、日常のイメージから以外なシーンを見せるという作品が多かった。
それにしても、いろんな意味で多くの人がビィオラの作品に興味を持つのも、劇中の見せ場のワン・ショットを見せ付けられるような、精神的に強いイメージを喚起させられるからだろう。最近の作品はあからさまに宗教的なイメージを使っているし。しかし、禅に惹かれていたりするわりには、実際に使う宗教イメージがキリスト教ばかりなのはどうしてだろうか、という素直な疑問もちょっとあったりする。(全作品見ている訳ではないのから強く意見出来かねるが。。)やはり具体的に表現する段になると慣れ親しんだイメージを使ってしまうという事なのか。
とはいえ、実はまだ展示は未見なのだ。ビデオ作品は見るのに時間がかかるというのに、作品が盛り沢山過ぎて丸一日でも開けて来ないと全部見るのは無理そう。感想は機会がありましたら。。。