junkoの日記

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ラスト・ショット。

帰国前日、最後の撮影に出向きました。ずっとロケ場所として徘徊していた村では、顔見知りになった人達が何人もいます。この日は、通訳の人もおらず一人でしたが、知り合った人に会うたび「你好。」挨拶を交わしながら散策していきます。
この日は天気も良好で日差しも暖かい。(近頃は、夜0度まで下がる日もあったりする。)村の元商店街あたりでは日向ぼっこを兼ねて、人々が出歩いています。そのうち、これまでここに通って2回くらい出くわしながらも、絶対写真を撮らせてくれなかった小父さんに出会い、立ち話しとなりました。私はほとんど中国語は分かりません。それでも彼は熱心に話しかけ、分かりやすい単語でコミュニケーションを取ろうとしてきます。
私も理解しようと彼の話を聞き入ってみましたが、やはりネイティブの人の会話は難しい。とりあえず「我不是中国人(私は中国人ではありませんから)。」という、逃げ口上のようなフレーズを繰り返してきましたが、ついに彼は椅子を持ってきて”まあ、ここに座れ。”という事に。気がついたら周りに7・8人くらいが集まって色々話しかけてくる中、私も少しだけ覚えた中国語と電子辞書を使いながら、どうにかやり取りをしていきます。
「明天、我、回国(明日、私は帰国)。」「今天、最后(今日で最後)。」と伝えると、小父さんは”そうか、そうか。”と頷き、空を指差し「明天、你、飛机(明日、あなたは飛行機)。」と返してきました。ここは北京首都国際空港から7・8kmという場所で、空を眺めていると視線の先に、飛行機がしょっちゅう横切っていきます。ふと、ここにいる人達は飛行機に乗る機会などは無いのだろうな、と思ったりしまいました。





やがて彼は「日本人、朋友(日本人の友達)。」と言い、私を通りのバス停まで送ろうと歩き出しました。私はその場にいた人達に「再見!(さようなら)」と挨拶をして別れます。
小父さんは通りを歩きながら、会う人ごとに「日本人、朋友。」と言って私を紹介していきます。しかし、バス通りに近づくとあっさり「再見!」と別れていきました。ちょっとお酒の匂いがしていたので、少々酔っ払っていたのかもしれません。





結局、ラストに相応しい?ちょっとしたエピソードに遭遇したような、不思議な気分で村を後にしました。これまで聞いた彼らの話では、今年中には大方この村も取り壊され無くなり、残っている住民も何処か他の場所へと移らざるおえないという事です。なので、本当にこれで見納めとなり、彼らとももう会う事はないでしょう。
来年からマンション建設が始まり、村人の何割かはそこに入居しに戻ってくるとの事です。もしかしたら、数年後もし私がここを訪ねる事ができたら、全く違った光景の中、彼らと出くわす事になるかもしれません。
翌日も引き続き晴天。早朝、北京首都国際空港から離陸。昨日は村からは小さく見えていた飛行機の中に、今は私が乗っていてる。そして、昨日まで通っていた場所が見る見るうちに遠ざかっていく、という時空の落差に少々感じ入ってしまいました。