junkoの日記

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本年における事象。 断片、その2。


去年から制作していた、北京で撮影した作品に関しての事、気になる経験をしました。
LOST WORLD」という作品は、北京郊外の再開発のための取り壊し地域を撮影したものです。おのずと崩壊したイメージが写し込まれている写真です。
展覧会は北京でしたから、帰国後に日本の関係者に写真を見てもらった時の事。私が北京で撮影したという詳しい内容を知らない人達は、こちらからのコメント無しで写真を見ると「これは東北ですか?」と尋ねました。イメージを見た人は、瞬間的に震災の被災地で撮影した写真では?と思い浮かんでしまうようです。


北京で最初に撮影した時期は1年ほど前、震災以前になります。その後、一旦帰国した時に東日本大震災に遭遇しました。




震災発生時から直後の津波の映像の数々は、次から次へと膨大な量が溢れ続ける事になりました。脅威的な破壊のイメージは、ほとんどの日本人が見たでしょうし、それらが私達の意識の中にどんどん入り込み、侵食されていきました。
そこで、”破壊されたイメージ = 東北地域であろう”というような認識が定着してしまったかのようです。膨大な自然エネルギーに対して、個人的な思惑のイメージなど全く対抗できないのはもっともな事象です。


今回の出来事は、直接被害を受けていない人達にも、心理的に何らかの影響が出ている事に、事態の大きさが感じられます。その原因になっているのが、あの破壊的な映像が途切れる事も無く流された所以にあるでしょう。
そうした状況で疑似体験となり鬱症状を生じさせる人もいた、との事もちょっと話題にもなりました。直接の被災者ではない分、ダメージを受けたとは表明しにくい。しかし、私を含め日本人の多くが反応しているのだな、という事は日常のちょっとした状況に現れます。
これだけ多くの人達が、共通のひどく痛ましい映像を共有してしまったという事に、今後さらに何か影響が現れるのでしょうか。加えて、時間がたてば起こった事に関して、色々と思いや願いをめぐらせ、イマジネーションで作り直していくのが、人間の想像力でもあります。
益々これから人々の意識の変化が気になるところです。 




今後、映像を作っていく上でも何らかの反映は現れるでしょう。すでに制作した作品にも、観る側にフィルターがかかった反応がありました。
来年、これらの作品を日本でも発表していく機会があります。その時、再びどのような感想を持たれるのか。複雑な心境ですが、我ながら興味をもっています。