junkoの日記

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春の鎌倉、神奈川近美で。

春の穏やかな日差しの中、久しぶりに落ち着いた展覧会を見る。鎌倉にある神奈川県立近代美術館で開催された「畠山直哉・鷲見和紀郎 展」である。(3/25日で終了)
畠山直哉氏の写真作品は、こちらが見ている限りでは、技術的に至ってシンプルな撮影技法のように見受ける。(あくまでも見た限り印象です。鉱山発破の「Blast」シリーズは別ものであろうが。)確かに建築物を撮る時には、アオリなどで歪みを修正したりという基本的な処理はしているだろうが、それを必要以上に職人的技法で見せつけるといったやり方はしないし、構図もそれほど奇を衒ったような見せ方ではない。しかし、そのような一見衒いのない撮影方法は、展示を見ている時、ふとギョッとする程の効果が現れたりする。
今回の展示作品の中で、博物館やテーマパークなどにある建築物の模型を撮影したシリーズがある。最初は実景を撮影したものかと思って見ているが、どこか実物とはズレたような感覚がある写真(森ビル所有の都心の模型)や、NYの摩天楼を珍しく普通に撮ってるなーと見てるうちに、ラストの写真でビルの間にゴジラのように大きな人間がヌッと現れるが、実はビルが模型で怪獣のように大きい人の方が実物だった、という作品(東武ワールドスクェア)など。
これらのシリーズは、ちょっとだけ種明かしのような部分を見せ、こちらの感覚を逆転させるような効果がある。何処で何を撮っても一定な感覚での撮り方であるために、こちらも淡々と見せられていつの間にか騙されてしまった?という感じ。
それから今回、彼の作品をまとめて見て改めて感じたのは、夕景や水の反映を捉えた写真が多いのでは?という点である。畠山氏の作家としての印象は、コンセプトが明快なために、今まではコンセプチュアル作家の印象が強かったのだが、夕景や水の反映など移ろいやすい光景を写したものは、かなり画面に叙情的な雰囲気を醸し出している。このナイーブさが、結構彼の写真の魅力でもあるような気がして、そこが以外にも多くの人を惹き付けているようにも思ってしまったのだが。。。



鷲見和紀郎氏の彫刻作品も今まで数点見た事はあったが、このようにまとめて見たのは始めてである。
彼の彫刻作品は、素材の持つ物質感が”重厚さ”とは違った存在感を持つ作品に思われる。それは、パラフィン(蝋)で作った作品などに、その特徴が顕著に現れているように見える。
蝋が流れて固まった様(さま)には、その物質特有の”かたち”が見えて、作り手の意思だけではない”姿”が見えてくる。その他のブロンズの作品にも、その素材が持つ特徴的な”かたち”が現れている。
今回の展覧会には「光の回廊」というタイトルが付けられていたが、会場は外光が多く採られている空間で天候も良い日だったために、まさにタイトル通りの陽射しの中で作品が見れたのも、中々いい体験であった。

坂倉準三設計。
決して広い美術館ではないが、外の空間の取り入れ方が特徴的であり、抜けの良い造り。私は実家がわりと近くなので、以前から数度となく訪れているが、印象がちっとも変わっていない。すぐ隣の八幡宮参道の賑やかさとはうって変わって、レトロモダンな落ち着いた空気が今だ流れているのには嬉しかった。


鎌倉八幡宮参道は賑やかです。