junkoの日記

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制作進行中に起きた反日デモ。

場に関わるテーマで制作を続けていると、その”場”から思いもよらない出来事の発生に出くわしてしまう時があります。
現在進行中の中国ロケの撮影を続けてきて、10月には再び渡航しようか思っていました。しかし9月に中国全土で突然起こった反日デモ渡航はちょっと延期して、しばらく静観する事態となってしまいました。




今はようやく収まっていますが、今回はかなり大規模で期間もある程度続いたため、物理的にもイメージ的にもお互いにダメージを受けてしまった様子には、色々と複雑な思いになりました。
実際の中国での状況は、この騒動に関わる事はせず、静観している人達のほうがかなり多かったようですので。日本の報道ぶりとは温度差があったようです。




少々以前から、自分としてはなんだか計り知れない国として気になっていました。それは中国の歴史文化などの深みに感心すると同時に、近年の変貌混沌ぶりな状況も含めての興味でした。
しかし今回の騒動はその計り知れない側面を、歴然と見せられてしまったような出来事でした。加えて、日本人としての自分の立場も否応無く感じてしまいました。




果たしてどういう成り行きになっていくのか、今回ばかりは様々と気になり報道をチェック。騒動の大きさがこれまでとは違い、結構異常な事態になってしまったゆえ、色々な専門家の中国事情についての解説が多く出回っていました。そのため、現地の被害状況の裏側、この騒動が広がっていった経緯の社会背景を、あらためて知る機会にもなりました。
しかし、論評している人達の解説内容が各人多少違っていたり、なかなか状況がすっきりと見えてこない事もありました。発信している人達の情報ソースの相違もあるでしょうが、あれだけ広い国なので各地の背景状況も違ってくるし、とても把握しきれるものではないでしょう。統一した見解などを求める事自体、難しい様子が伺われました。
騒動まで発展したデモは、やり方としては苛烈ですけれど、そこまで行なってしまう中国の複雑な社会構造が透けて見えてきたりして、これから再び渡航し活動するうえでも色々と再確認できたような気もします。





2010年に撮影、天安門広場、北京




中国共産党一党独裁体制でほぼ専制支配しているもとでは、なかなか自由に意見表明できません。そのため国民側は色々なカモフラージュをしながら、デモという手段で訴えかけていく訳です。なので、「反日」というのは表向きに騒動を起こすうえでも打って付けのネタになっている、という事が今回はさすがにこちら側にもバレてしまいました。



尖閣については外交問題ですから、個人が意見を表明する気分にはなりません。ただ個人的にお互い知り合いになった状況があるならば、この一件に関してはあまり神経質にならず、これからの交流に配慮するのがノーマルな対応ではないかと思ったりしました。
一般的な感覚としては、政治的問題によってこれまでの個人的な付き合いが左右される事は、やはり不自然と感じてしまいます。

2010年に撮影、天安門、北京










さて写真という手法で制作していると、現実の場に赴き撮影していくので、このような社会的な出来事に突然放り込まれたりします。
自分とは関わりが無かった突発的に発生した問題に対して、どう関わっていくのか色々考えさせる事が多い昨今であります。この事についての考えは、また別の機会に。




次回の中国渡航は、11月半ばくらいから始める予定です。ロケ場所の近くには、日本人も多く行かれる観光地としても有名な地区があります。
デモの件は神経質になり過ぎないようにしていますが、やはり日本からの情報が少な過ぎる場所はまだ遠慮しておこうかと思い、今回のロケ場所を選定しました。
その地区は、世界遺産にも指定されているので、以前から一度は行きたいと思っていました。








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反日”を名目上掲げている件について、騒動の本当の動機は何なのか、見え隠れしていてなかなか分かりにくい中国の現状が伝わってきます。
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2010年に撮影、建国門、北京